売買契約を結ぶ

売買契約の基礎知識

契約条件について売主・買主双方が合意したら、売買契約を締結します。いったん契約を締結すると、簡単に解除することはできませんので、事前に契約内容を十分に確認することが重要です。

売買契約の基本的な考え方を知る

売主と買主との契約内容は、法令に違反する、公序良俗に反するなどの問題がない限りは自由です。逆にいえば、契約は自己責任で締結することが原則ということです。もちろん、消費者が一方的に不利益を被る契約とならないよう一定の法整備がなされていますが、すべてをカバーできるわけではありません。最終的には自己責任でしっかりと契約内容を確認した上で、契約に臨むことが重要です。
なお、契約に定めがない事項については、民法その他の関係法令に従い、協議の上で決定することとなります。したがって、重要な契約条件が不明確であると、契約後のトラブルにつながってしまいますので注意しましょう!

手付金について理解する

手付金には、(1)証約手付(2)解約手付(3)違約手付の3種類があります。

 

(1)証約手付

契約の締結を証することを目的として授受される手付をいいます。

(2)解約手付

売主は既に受け取った手付金の倍額を買主に返すこと

買主は既に支払った手付金を放棄する(返還を求めない)こと

により、売買契約を解除することができる手付をいいます。

(3)違約手付

当事者に契約違反(違約)があった場合に、損害賠償とは別に違約の「罰」として没収する、または倍額を支払うという趣旨の手付を言います。

 

一般的に不動産売買契約では、(2)の「解約手付」として授受されます。なお、民法でも手付金の性質について特段の定めがない場合には解約手付と推定するとされています。

 

解約手付による契約の解除を一般的に「手付解除」といい、手付を倍返しする、または放棄することにより契約を解除することが可能です。 ただし、手付解除ができるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。
つまり、既に相手方が契約に定められた約束事を実行している場合には、手付解除はできません。


ただし、手付解除に当たっては、「相手方が履行に着手しているかどうか」をめぐってトラブルになることも多いようです。また、手付解除が可能な期間は、売主と買主双方が解除権をもっているので、契約が実行されるかどうかが不安定な状態となります。
したがって、手付解除ができる期間を「契約日から●日以内」または「令和●年●月●日まで」と限定することもあります。

契約を結んだら、簡単には解除できない

特に、不動産売買のように大きな取引を行う場合は、契約は売主と買主の信頼関係の上に成り立つ大事な約束です。そのため、いったん契約を締結すると、一般的には、一方の都合で簡単に契約を解除することはできません。契約の解除には、主に以下のようなものがあります。

手付解除

相手方が契約の履行に着手するまでは、手付金の倍返し、または放棄により契約を解除することができる。

危険負担による解除

天災により物件が毀損した場合に、過大な修復費用がかかるときは、売主は無条件で契約を解除することができる。

契約違反による解除

売主または買主のいずれかが契約に違反した場合、違約金等の支払いにより契約が解除される。

契約不適合責任に基づく解除

物件が契約内容に適合しないもので、その不適合が軽微でない場合は、買主は契約の解除ができる。

特約による解除(ローン特約など)

特約の内容に応じて解除することができる。例えば、「ローン特約」の場合なら、買主に落ち度がなくても住宅ローンを受けられなかった場合に、買主は無条件で契約を解除することができる。

合意による解除

当事者の合意に基づく条件で契約を解除することができる。

 

 

※上表の内容は一般的なものであり、個々の契約で契約の解除に関する取り扱いは異なります。

契約不適合責任について理解する

雨漏りや建物の白アリによる腐食などのような物件の欠陥のことを、これまで「瑕疵」(かし)と言い、それについての売主の責任のことを「瑕疵担保責任」と言っていました。しかし、この責任については、令和2年4月1日に施行された民法の改正により、その責任の名称だけでなく内容も大きく変わりました。改正民法は、まず売主には、売買の対象物件について「種類、品質、数量」に関して、契約の内容に適合した物件を引き渡す義務があるという前提で、もしそれらについて契約の内容に適合しない物件を引き渡した場合は、売主の債務不履行責任になるということです。例えば、雨漏りや、白アリによる腐食のある建物を引き渡した場合は、品質に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務の債務不履行だということです。

契約不適合責任の内容

契約の対象物(目的物)に、前記のような不適合があったときには、買主は、その補修の請求ができ、補修請求をしても売主がやらないとき、または補修自体が無理なときなどには、売買代金の減額請求ができます。また、一般的な債務不履行の原則により、損害賠償請求もできますし、契約の解除もできます。ただし、損害賠償は、売主に何らの責任がない場合はできません。また解除は、その不適合が「軽微」なときにはできないことになっています。

売買契約のおける特約

この民法の規定は、任意規定と言って、任意に変更・修正ができる規定であるため、当事者間の特約で別の定め(特約)をすることができます。特に既存住宅(中古住宅)の場合は、経年劣化・自然損耗等により、ある欠陥等の事がらが契約不適合に当たるかどうかの判断が困難または不可能です。そこで一般の取引においては、売主が責任を負う範囲を限定したり、責任を負う期間を短縮したりしています。また、場合によっては、売主は一切責任を負わないという特約もあります。その場合でも、売主はその不適合を知りながら買主に告げなかったときには、責任を免れませんが、そうでない以上、特約通り免責されます

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